知遊vol.18(2012年7月5日 発行)
【知遊の人】
土筆摘む先達の心、忘じがたく
還暦を過ぎ『蜩ノ記』で直木賞を受賞
葉室 麟(作家、第146回直木賞受賞)
【一枚の絵】
濱田庄司の人生が染み渡る「一枚の大皿」
山内昌之(歴史学者)
【仲代達矢の無名塾へようこそ】
ゲスト~二代目市川亀治郎改め 四代目市川猿之助(歌舞伎俳優)
亀治郎さんには代々の猿之助さんを超える「市川猿之助」になっていただきたい!
仲代達矢(本誌編集委員、俳優、無名塾主宰)
【黒田東彦の世界を見る眼】
フィリピン、その巨大なポテンシャル
黒田東彦(本誌編集委員・アジア開発銀行総裁)
【中国古典に学ぶ】
何の憂いか喜びに非ざらん
・『菜根譚』
守屋 洋(中国文学者)
【動物行動学の視点】
「氏か、育ちか?」この永遠のテーマを考える
・遺伝と学習についての話
今福道夫(本誌編集委員・京都大学名誉教授)
【やまだ紫の世界】
やまだ紫の望んだ「一滴の」幸福
白取千夏雄(編集者、やまだ紫・夫)
【囲碁と読書は友だち】
不断の努力と直観力、それは親子の関係です
マイケル・レドモンド(プロ棋士・日本棋院九段)
【ここが違う菌の常識】
乳酸菌、この愛しいヤツ!
青木 皐/高田美果
【ヒューマンドキュメント】第18回
「ロボットスーツHAL」開発物語
世界に先駆けて進化する最先端人支援ロボット
福山 健
特集記事
「知遊の人」は葉室 麟(はむろりん)さん。取材や打ち合わせでタイトなスケジュールのなか、直木賞贈呈式のために久留米から上京された葉室さんをおたずねしました。朝早くにもかかわらず、約束の時間より十数分も前からインタビューに応じてくださいました。

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直木賞贈呈式のために久留米から上京された葉室さんを、宿泊中のホテルにお訪ねしました。取材や打ち合わせでタイトなスケジュールのなか、朝早くインタビューの時間をとってくださいました。
紹介していただいた受賞作発行元の編集者氏とともに葉室さんが現れたのは、約束の時刻より十数分も前。少しでも長くインタビューに応じようという配慮が感じられました。
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受賞作は「すっぴんのストレート」で書く
―― 『蜩ノ記』は、月刊『小説NON』(祥伝社)に連載された「秋蜩」に加筆・訂正して単行本にまとめられたものだそうですが、人物描写がこまやかでイメージしやすいし、主人公・戸田秋谷の命の残り時間が季節の移ろいとともに少なくなっていく描写が素晴らしいですね。
葉室さんの作品には魅力的な人物が多く、映像化しやすいのではないかと思う。戸田秋谷役はさしずめ役所広司さんがいいかな、と、本誌前号の仲代達矢さんとの対談にご登場いただいたときの、清廉で謙虚な役所さんの話しぶりや挙措を思い出しながら、「映像化のオファーは?」と、お訊ねしてみると、「映像化の話はいただいています。秋谷には役所さんがいい、と、おっしゃる方がありましたねえ」とのことであった。大好きな小説の映像化を想定して、勝手にキャスティングする読者はけっこう多いようである。
―― 受賞後、本当にお忙しい日々と思います。今日は、貴重なお時間をありがとうございました。
疲れたとき、寂しいとき、病んでいるとき、人はいろいろな場面で小説の世界に浸ろうとする。いま、「最も心に届く作品を書く」と評価の高い作家は、これからどんな安らぎを読者にもたらしてくれるのであろうか。
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葉室 麟(はむろ・りん)プロフィール
1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業。地方紙記者などを経て、2005年、『乾山晩愁』で第29回歴史文学賞を受賞し、作家デビュー。07年、『銀漢の賦』で第14回松本清張賞を受賞。その後、『いのちなりけり』『秋月記』『花や散るらん』『恋しぐれ』が直木賞候補となり、12年『蜩ノ記』により第146回直木賞を受賞。このほかの作品に、『実朝の首』『風渡る』『川あかり』『刀伊入寇』『橘花抄』『冬姫』『柚子の花咲く』など。 |
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